2008年5月 of FUTURE WALKER


HOME > コラム > 2008年5月

2008-05

バンクーバーより愛を込めて

今回は、諸都合でカナダのバンクーバーから記事を寄稿するので、
私が触れたバンクーバーの映画事情について書いてみよう。

映画というと、普通は米ハリウッド、少し詳しくても欧州、韓国などは思い浮かべるが、
まずカナダを思い浮かべる人はいないだろう。
確かに、「カナダ映画」というと、映画業界の人間でもほとんど聞かない。
それほど「カナダ映画」はマイナーである。
しかし、バンクーバーは、「第二のハリウッド」と呼ばれる映画産業の街であることはご存知だろうか。

バンクーバーは、ほぼ米国国境に位置し、米国よりも製作費用が安く済むことからも、
ハリウッド映画の撮影が頻繁に行われている。ゆえに、撮影スタジオも充実しているし、
製作プロダクションも多数あり、映画学校も充実している。
犬も歩けば「撮影現場」に当たるような街である。

そんなバンクーバーで、『KICK START』というショートフィルムの上映会にいく機会を得た。
これは、カナダ監督組合などが主催するもので、映画の企画を募集し、
選ばれた5つに対して二百万円の資金と様々な技術的サポートを提供して、
1年以内で10分の短編を作らせるというものだ。

まあ、最初の3本は、ハッキリ言って眠くなるようなものだったが、
最後の2本はなかなかレベルの高い、面白い作品だった。
「自主制作」ではなく「インディペンデント映画」の質に迫るものであった。
興味深いのは、これらの作品を作った監督たちが皆、何らかの形で映画業界に
既に携わっている人々であることだ。
ただ、まだ作りたい映画が作れていないだけである。
そういった人々に出資して、才能を発掘しようという試みであり、長年続いているようだ。

日本での賞レースは、既に出来上がった自主制作作品の募集であり、
主催企業は「棚からぼたもち」を期待しているにすぎず、
出資して育ててみようという気概は存在しない。
しかし、映画の才能に「棚からぼたもち」はあり得ない。
なぜなら、それなりの映画製作には、個人でまかなえない程の資金が必要だからである。
ポケットマネーで作ったところで、たかが知れている作品しか出来ない。
良い映画を生み出していけるようなシステム作りをするには、儲け優先の企業主導型ではなく、
『KICK START』のような組合主導型の体制が必要なのではないか。

しかし日本には、それだけの独立した大きな力を持った同業者組合は、残念ながら存在しない。
だが、日本より大分ましな映画製作システムがある北米でさえも、オリジナル映画が
ほとんどなくなってきており、原作ものばかりか、外国映画のリメイク合戦に終始している。
時間をかけてオリジナルを作るよりも、既に出来上がりが存在するものをリメイクする方が、
費用対効果的には上であるという、新自由主義的システムが横行しているためであろう。

目先の金儲けしか考えない新自由主義は、どんな芸術文化をも育てることが出来ない。
なぜなら、金持ち以外に「自由」はないからである。

written by 中村未来歩