2008年9月 of FUTURE WALKER


HOME > コラム > 2008年9月

2008-09

映画の醍醐味

最近はやたらと上映映画の入れ替えが早すぎる。
「あれを観たいなあ」と思っていても、ちょっと忙しくて数週間過ぎてしまうと、
すでに終わっていることが多い。
特にシネコンは、入れ替えの早さに節操がない。
世界で大ヒットしているハリウッド映画の『ダーク・ナイト』でさえ、
もう一度観に行こうかと思っていたら、近所のシネコンでは終わってしまっていた。

『ダーク・ナイト』は、アメリカンコミックで有名な「バットマン」の映画新シリーズである、
前作『バットマン・ビギンズ』の続編だが、タイトル通り、
実にダークな世界が広がっている映画である。
元々の原作コミックも、本当はダークな物語であって、
巷に流れていたアニメのそれは、子ども向けに作り直されたものだったのだ。
この映画新シリーズは、その原点に返るもので、
原作の世界観をさらにリアルに再構築したものである。
とにかくダークな世界観が徹底されていて、
狂った悪役〝ジョーカー〟の存在感が強烈で、バットマンは陰が薄い。
〝ジョーカー〟役が遺作となった若きヒース・レジャーの真に迫る〝最凶〟の演技に脱帽だ。
ヒーローものをここまでリアルなホラーに仕立て上げた監督の気概にも、敬意を表したい。

それに比べて、同じコミック原作でダークな世界を描く『20世紀少年』はひどい。
人気コミックの映画化で、私も好きな漫画だが、映画の世界観が全然成り立っていない。
その場その場だけの盛り上げしか考えておらず、全体としての世界観の統一性がない。
また、技術的にも幼稚で、陳腐な音楽とバラエティ番組のようなメイクで、
客をなめているとしか思いようがない代物だった。
所詮、テレビ上がりの監督は、〝適当〟なテレビ的作りしかできないのだろうか。
映画は、売れればいいというものではない。

原点に返るといえば、宮崎駿の『崖の上のポニョ』だ。
昨今のアニメはすべてCGで描いてしまっているが、やはり手書きの味わいに敵うものはない。
それを知っている宮崎駿は、原点回帰して、あえて大変な手書きセルのアニメを作った。
ゆえに、とても暖かい感触のある、暖かい世界観の、ホッとする作品だった。
大作とはいかないまでも、原点を見直すことの大切さを実感した。

人を楽しませ、人の心に残る「映画」に必要なのは、見栄えではない。
映画を観ることによって、その独自の世界に引き込まれ、
その世界に浸れる特別な時間を味わうことができるのが、映画の醍醐味ではなかろうか。
そんな醍醐味を味あわせてくれる映画が、もっともっと復活してきてほしいものである。

written by 中村未来歩