2008年12月 of FUTURE WALKER


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2008-12

映画とカネ

とにかく最近は、映画のレベルが低すぎる。全体的なレベルのあまりもの低さに、
「面白い映画がない」から「映画は面白くない」に定着しつつある。
往年の粋な映画を観たことがない若年層は、すでにその感覚が固定化している。

では、いったい、いつから映画は面白くなくなってきてしまったのだろうか。

よく「最近の映画は面白くない」と言われるが、
〝最近〟という響きからいくと、ハリウッドの衰退に関連が深いと思われる。
日本映画などはとっくの昔に面白くなくなっているし、
その他の国の映画は、元々、あまり日本に入ってきていない。

そこで、AFI(アメリカ映画協会)が、1998年と2007年に作成した
「アメリカ映画ベスト100」を見てみた。
これは、米映画業界の1500人以上の人々の投票によるものである。

二つのベスト100映画のリストを見ると、なかなか興味深い。
『市民ケーン』は、双方のリストで1位を獲得。
『カサブランカ』と『ゴッドファーザー』が、それぞれ2位と3位を分け合っている。
続いて、『風と共に去りぬ』、『レイジング・ブル』、『アラビアのロレンス』、
『雨に唄えば』、『オズの魔法使い』、『卒業』、『めまい』、『シンドラーのリスト』が、
10位までにランキング。タイトルを聞くだけで、また観てみようかと思うものばかりだ。

ここでふと製作年をみると、古いものばかり。
唯一、『シンドラーのリスト』(‘93)がランキングしているが、
15年前なので〝最近〟なのか微妙だ。
そこで、二つのリストの200項目を年代別に数えてみた。
最も多いのが‘70年代で22作品。次いで‘50年代の21作品、’30年代と‘60年代の17作品だ。
21世紀にいたっては、『ロード・オブ・ザ・リング』(50位)の1作品しかない。
30年ごとに見ていくと、‘20~‘40年代は33作品、‘50~‘70年代は60作品、
‘80~‘00年代は僅か23作品だ。‘70年代に絶頂を迎えた米映画が、
‘80年代には9作品に一気に落ち込み、‘90年代に13作品と少し回復はするものの、
すでに8年経つ21世紀では、いまだ皆無に近い。

こうしてみると、技術の発展だけが映画界を活性化するわけではないことが、ありありとわかる。
では他に、何が大きく影響するのか。

「興行収入至上主義をやめない限り、面白い映画が作れなくなり、映画界は衰退する」
と言っていた米映画関係者の言葉が興味深い。
〝当たる〟ことしか考えないということは、冒険ができず、ベタな作品しか作れなくなる。
利潤追求型の新自由主義経済が、1980年代に登場し、現在に至るまで拡大し続けた事実と、
ハリウッドの衰退データの反比例は、密接な関係があるのではなかろうか。

written by 中村未来歩