2009年3月 of FUTURE WALKER


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2009-03

日本映画は好調か?

今年2月に行なわれた米アカデミー賞にて、日本映画『おくりびと』に外国語映画賞、
『つみきのいえ』に短編アニメーション賞が贈られた。
両賞の日本映画の受賞は初めてで、日本映画のダブル受賞も初めてである。

『おくりびと』は、去年公開されている時に観たのだが、
最近にしては、なかなか良い映画であった。
納棺師の仕事という、テーマの着眼点のユニークさもさることながら、
主演の本木雅弘の演技は実に自然で魅力的、
そして納棺会社の社長役の山崎努もすごくいい味を出していた。

死とは、誰にでも訪れるものであり、自分であれ他人の死であれ、必ず対面する出来事である。
死があるから、生が“生きる”のである。
だからこそ、死と向き合うことがとても大事なのでは、と。
間違えていけないのは、死に“逃げる”のではなく、“向き合う”ということ。
この映画は、高らかにそんなことを謳っている訳ではないが、
じんわりと、死に向き合う“生”の素晴らしさを語っている。
人生と同じく、笑いと涙を織り交ぜながら、
納棺師という、普段気に留めないような職業を描きながら、
そして夫婦の関係、親子の関係、人との関係を等身大にみせながら、素敵な時間を提供してくれる。

しかし、広末涼子だけは、どうも残念でならなかった。
本人なりにがんばっているとは思うが、どうしても「私、演技してます」という雰囲気が抜けない。
常に「可愛い表情をしなければ」というアイドル時代の癖が染み付いているのか、
素の顔、表情が出ている感じがしない。
それに対して本木雅弘は、映画の世界観に溶け込み、
納棺の美しい儀も完全に体得しているように思えた。

米アカデミー賞受賞を受けて、マスメディアがやたらと騒いでいるが、
去年なんかはこれらの映画には見向きもせず、映画館ではすぐにひっそりと終わっていた。
外国が評価して初めて注目している。自分たちの目で作品を評価できない日本が情けない。

また、かつて『たそがれ清兵衛』がノミネートのみに終わったこともあるが、
『おくりびと』よりも完成度は高かった。
受賞するかどうかは、その時の比較の問題であり、
米映画が急激に不作に落ち込んできているという時代背景もある。
それを無視して、諸手を上げてお祭り騒ぎをしても、今後の真の日本映画の発展はあり得ない。
実際、去年の興収比は、邦画が洋画を超えて再逆転したが、
映画の興行収入全体は、一昨年を下回っており、この傾向は続いている。

公開の待ち遠しい映画が次々に登場しなければ、
今年さらに深刻さを増す、“未曾有”の不況を日本映画界が乗り越えることは難しいのではないか。

written by 中村未来歩