2010年2月 of FUTURE WALKER


HOME > コラム > 2010年2月

2010-02

映画は3D新時代に入るか?

3D映画の本命、『アバター』(原題:AVATAR)の登場と大ヒットにより、
映画は3D時代に突入すると言われている。
『アバター』は『タイタニック』の興行成績を既に超え、史上最高の興行収入の映画となった。
果たして、本当に3D新時代に入るのか、サイレントからトーキー、
モノクロからカラーへと変遷してきたように、2Dから3Dへと映画は代わり始めたのか、
『アバター』を観て考えてみた。

『アバター』は、劇場で3回観た。1回目は、シネプレックス新座にてXpanD方式の3D、
2回目は、同じ劇場にて従来と同じ2D、3回目は、109シネマズ菖蒲にてIMAX 3Dデジタルを観た。
なぜ3Dを2つの劇場でわざわざ観たかというと、3D上映方式がそれぞれの系列映画館で違い、
様々な条件やクオリティがかなり違うということが判明したからだ。
主に4つの上映方式があるみたいだが、全てを確認するには金銭的に厳しいので、
近隣のシネコンと国内では一番良いとされるIMAX 3Dデジタル方式のところへ足を運んだ。

まず、3D映画ブームというのは、これが最初ではないことをご存知だろうか。
実は3Dブームはこれが3回目で、1回目は1950年代、2回目は1970年代から’80年代に起こった。
ただこれまでは、赤と青のメガネを使ったもので、色の再現性は損なうし、
目や頭が疲れやすく、長時間の視聴に耐えうるものではなかった。
ゆえに、ディズニーランドなどでのアトラクション上映でしか普及せず、実用には乏しかったのである。
しかし、デジタル技術も定着してきた現在の発展した3D方式は、
2時間を超える映画の視聴に耐えうるものになり、いよいよ3D新時代到来と言われているのである。

では、実際に『アバター』を2Dと3Dで見比べた感想だが、
やはり3Dの方が迫力があり、よりその世界に没入して楽しむことができる。
従来の3Dのように、観客をびっくりさせるために必要以上に画面から飛び出してくることはなく、
どちらかというと、奥行きのある映像という感覚であった。
だが、今まで2Dに慣れているせいか、3Dを視聴するという感覚に慣れるまで少々時間はかかる。
どこを観ていいか、戸惑ってしまうのである。
また、奥行きが生じるため、字幕のレイヤー位置が気になり、なんだか読みにくい。
そして当たり前だが、特殊メガネをかけているので、目と頭が疲れやすい。

XpanD方式とIMAX 3Dデジタル(以下、IMAX)の違いだが、IMAXの方が断然良い。
キャパ数に対するスクリーンの大きさが圧倒的で、奥行きがあるということを超えて、
まるで映画の世界に居合わせているかのような感覚になる。
かなりレベルの高いサラウンド音響もその感覚を加速させる。また、画質も圧倒的に良い。
XpanDでは分からなかった、キャラクターの細かい表情や、微妙な空気感までも描写しきっている。
その画質力なのか、字幕も比較的読みやすかったように思う。
デジタルプロジェクター2台で投影しているだけのことはある。
ただ、XpanDは、頭を傾けても3D崩壊(2重映像になる)しないし、座席位置による差はあまりないのだが、IMAXは、頭を傾けると3D崩壊するし、端の席の方に座ると、3D崩壊しやすくなる。
ゆえに、真ん中の席に座っていても、右端に出てくる字幕は若干2重に見える。

北米では、IMAXシアターがかなり浸透していることもあり、
『アバター』は通常の何倍もの解像度のIMAXカメラで製作されているので、
当然、IMAXシアターで観ることがベストである。
だが、日本では全国でも数館しかIMAXシアターがなく、
しかも解像度の落ちるIMAX デジタルシアターのみである。
IMAXも完璧というわけではないが、予算を抜きにすれば現状ではベストの撮影、上映方式である。
今後、日本でももっと普及していって欲しいものだ。

いよいよ、3D映画の波も止められない勢いだが、現段階ではまだ様々な課題を抱えている。
上述したが、3D崩壊と字幕の見にくさは今後改善していかなければならないし、
映画館ごとに上映方式の違いがあり、3Dに質の差があるのでは観客は困る。
業界統一規格でベストのものを提供して欲しいものだ。
また、現状の3D上映技術では、個人によって視聴の差が出てくる。
動体視力が高い人などは、ちらつきが気になるという。
いずれ実現されると思うが、メガネなしでの3D上映は、誰もが望んでいるのではなかろうか。
しかし何はともあれ、3D上映の値段をもっと安くしなければ、観客は観る本数を押さえなくてはならず、
映画業界全体の活性化を阻害する恐れがある。
『アバター』が『タイタニック』を超えて興行収入世界一になったが、それは料金が高いからであって、
『タイタニック』より多くの人々が観に行ったということではない。
高額でも足を運ぶのは、3Dがまだ珍しいからであって、それがいつまでも続くとは思えないのである。

技術的課題もたくさんあるが、演出上の課題も多い。
3Dになるということは、より現実に居合わせている感覚に近くなるわけなので、
2Dの時の観客の体験とは当然違ってくる。
2Dの時は、フォーカスによって、監督が見せたいものだけに集中させることができたが、
3Dの場合は、被写界深度が浅く、ピントの合っていない部分があると、観客は2Dの時より違和感を感じる。
だが、被写界深度を深くして全てにピントが合うようにすれば、
観客一人一人によって集中する部分に違いが出てくる。
どこを観るか分からないという、舞台観劇に近い環境になるということだ。
つまり、映像の今までの特権である’演出の強制力’が薄れる。
また、これは大画面高画質のIMAXに特に言えることだが、
観客は2Dほど素早く3D情報を処理することはできないので、
スピーディな画面展開、細かいカット割りを避けなければ、何が起こっているのか分からなくなってしまう。
すでに今の2Dでもついていけない、めちゃくちゃなカット割りは多数存在するのだが、
それも含めて今一度スピーディな画面構成を考え直していかなければならないのではないか。

いろいろ考察したが、結局、何よりも大切なのは、映画の内容が面白いかどうかである。
2Dであろうと3Dであろうと、IMAXであろうとなかろうと、
映画そのものが面白くなければ誰も観に行かないのである。
『アバター』の大ヒットは、3D映画であるからではなく、内容が面白いからなのである。
あくまでも3Dは、付加価値なのである。だから、3Dという技術的な展開ばかりを議論するのではなく、
どうやったら、たくさん面白い映画を作れる環境が出来上がるのか、
今こそ、真剣に考えることが一番重要なのではなかろうか。


written by 中村未来歩

参考:3D映画の方式について


Music-Clip 配信中

もったいない


 iTunes Store(Japan)

人間、アホでなんぼじゃ

想像と創造の源は自然から